東住吉森本
リハビリテーション病院
第2次中長期計画
2022年の診療報酬改定により、回復期リハビリテーション入院料1は重症者(日常生活機能評価10点以上またはFIM総得点55点未満)割合が新規入院患者の4割以上に引き上げられた。回復期リハビリテーション病棟に多くの重傷者の受け入れを促し、急性期入院期間短縮を補完させる位置づけが強まった。それにより、病棟生活における身体機能面のADLケア頻度が増加し、また、重症患者割合引き上げに伴う脳血管疾患患者割合上昇による高次脳機能障害患者の増加と高齢化に伴う認知機能低下患者の増加も加わり、看護・介護ケアに要する労力・時間が格段に増している。それだけでは無く、重症者は頻回な吸引や口腔ケア・気管チューブケア・酸素吸入・点滴・状態悪化時対応などの医療行為の必要度も高く、回復期リハビリテーション病棟の体制で行えることの範疇を最早超えてしまっている。人員要件の強化が無いままに、重症基準が引き上げられたことは由々しき事態である。その上、収束の見えない新型コロナ禍は回復期リハビリテーション病院に重大な医療リスクをもたらしている。質の維持・向上には、チームアプローチと人員配置の強化が不可欠となった。経営を圧迫することになるが、リハビリテーション専門病院といえども、診療報酬では評価されない治療の部分を人的にも物的にも強化する必要性に迫られている。
第1次中長期計画は、リハビリテーションに特化した病院として回復期リハビリテーション病棟機能とリハビリテーション医療そのもののレベルアップを図ること、そして、当時ほぼ入院のみの運営であったが、リハビリテーション病院の専門性を生かして、入院以外の事業を展開することを目指したものであった。第1次中長期計画基本方針を以下に示す。
第1次中長期計画基本方針
- 平均稼働率95%以上の維持
- 病院機能の標準化-病院機能評価取得 2018年4月までに病院機能評価認定証を取得する
- 高次脳機能外来・リハビリテーションの開設
- 脳卒中後外来・リハビリテーションの開設
- ニューロリハビリテーションの導入
- 訪問リハビリテーションの充実
- 通所リハビリテーションの開設
5年を経て、第1次中長期計画基本方針は、全て達成された。上述の如く、回復期リハビリテーション病棟の運営は厳しさが増す中、今後、回復期リハビリテーション病棟における疾患別リハビリテーション料の包括化も検討されるだろう。入院収入だけに依存しない事業を展開し、収入源に多様性を持つことがリスクヘッジとなる。まさしくそれは、中長期計画の方向性と一致しているので、憂うことなく、力強く第2次中長期計画を進めていく。第2次中長期計画は、地域の包括的リハビリテーション拠点としての総合リハビリテーションセンターとなる道程である。あらゆるリハビリテーションへのニーズに応える事の出来る、社会の公器足り得るリハビリテーション病院を築くことを旨とする。
第1次中長期計画事業計画到達状況
-
従来通りの短い平均在院日数で成果を上げ、出来る限り早い紹介患者の受け入れが可能となるようを今後も努力する。地域との交流、病院からの発信を活性化していく。
ホームページ、広報誌、サービス向上員会活動などを充実させる。
- 高稼働率、短い平均在院日数、高実績指数は恒常的に達成した。
- 病棟生活リハビリテーションを未だ初期段階だが開始した。
- 嚥下造影検査を導入し、嚥下機能カンファレンス開始した。
- 心臓血管外科を標榜し、心大血管リハビリテーションを開始した。
- ホームページ完全リニューアル:発信力は強化され、紹介元の拡大、遠方からの紹介、
- 専門外来への依頼、ホームページからの情報を得て職員応募など、有形・無形の効果がみられた。
- 広報誌「つなぐ」は季刊誌として定着し、22巻まで発行を重ねた。
- 新型コロナ禍は、病院運営、サービス向上面、地域との交流などを難しいものとしたが、
- Wi-Fiの整備やWeb面会など新たに推進出来たこともある。
- オフィスグリコで無人売店を開始した。
- 2018年1月に病院機能評価を受ける。
- 高次脳機能外来研究班(OT、STで編成)を2017年度に立ち上げ、高次脳機能外来リハビリテーションの開設に向け準備する。
- 高次脳機能外来開始:高次脳機能外来の3本柱を確立した。
①日常生活動作を含むQOLの向上リハビリテーション:疾患別リハビリテーションにおける算定日数上限の除外対象患者として、月13単位ルールに縛られずリハビリテーションを提供している。
②自動車運転再開支援:自動車運転に必要な高次脳機能検査バッテリーを設定し、評価システムが出来た。近畿自動車学校との連携し、大阪府高次脳機能障がい者自動車運転評価モデル事業に参入し、実績を上げている。
③復職・就労支援:高次脳機能外来でリハビリテーションを行い、就労先と調整・復職を支援している。社会復帰や就労支援の為、大阪府立障がい者自立支援相談センター、大阪市更生療育センター、大阪市長居障がい者スポーツセンター、大阪市中南部各区の障がい者基幹相談センター、大阪市障がい者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所などと大阪市中南部高次脳機能障がい包括ケアネットワークを結成し、基幹病院として運営を行っている。高次脳機能障がい支援資源マップも作成した。
3本柱に加え、他施設からの依頼を受けて、
④身体障がい者手帳、精神保健福祉手帳、養育手帳などの為の外来高次脳機検査、診断書作成も開始した。
- ボツリヌス療法研究班(PT、OTで編成)を2017年度に立ち上げ、脳卒中後外来・リハビリテーションの開設に向け準備をする。
- ボツリヌス療法外来は定着している。ボトックスに続き、ゼオマインも使用し、症例を積み重ねている。電気刺激筋同定施注法を確立した。
- 電気刺激研究班(PT、OT、STで編成)とロボット研究班(PT、OTで編成)を2017年度に立ち上げ、ニューロリハビリテーション導入に向け準備をする。
- ニューロリハビリテーション・先端リハビリテーションの導入。
- 機能的電気刺激療法の拡大・深化:理学療法・作業療法:IVES本体2機・子機1機、ESPURGE1機、アクティブ1機、DRIVE HOME3機、NM-F1
1機、嚥下リハビリテーション:NEURO TREAT1機が稼働している。
- ロボットリハビリテーション導入:リハビリテーション支援ロボット
トヨタウェルウォークを導入し運用している。研究、外来での使用も進んでいる。
- 運動量増加機器加算算定:NM-F1、ウェルウォークが対象機器となった。
- CI療法を開始した。
- 脳画像カンファレンスを開始した。
- 訪問リハビリテーションの拡大を計画する。
- 短時間通所リハビリテーションを視野に準備を行う。
- 通院リハビリテーション・通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションを展開し、医業収入の約8%にまで成長した。
- 嚥下リハビリテーション外来を開始した。嚥下造影検査による嚥下機能評価、嚥下リハビリテーションを始めている。
- 装具・義肢外来を開始した。川村義肢との共同企画で行っている。
第2次中長期計画 行動指針
- 回復期リハビリテーション病院としての価値を更に高める為に、「入院生活全てがリハビリテーション」とする多職種によるアプローチ・連携と先端リハビリテーションによる高度なリハビリテーション医療を追求する。前提として、すべての職種のスキルアップが必要であり、それを可能とする環境を作り上げる。そして、高いリハビリテーション専門性を入院以外の事業にも活用する。
- 脳卒中後各種リハビリテーション専門外来にて脳卒中後のあらゆる後遺に対応する。
- 嚥下リハビリテーション、心大血管リハビリテーションなど、専門外来リハビリテーション部門の拡大を図る。
- 通院・通所・訪問リハビリテーションを拡張し、生活リハビリテーションセンターとして回復期から維持期まで包括的リハビリテーションで生活を支える。
- 医療法42条施設・健康増進施設・指定運動療法施設を開設し、運動器・廃用症候群・脳卒中後遺症などに対する保険外リハビリテーションやメディカルフィットネスを提供する。
- 感染対策設備を整備し、繰り返す感染流行に耐えることが出来るリハビリテーション病院となる。
- 少子高齢社会、人口減少、地域医療構想下での病院淘汰、災害、パンデミック、テクノロジーの進歩などVUCAの時代の恒常的事業継続を管理する部門を創設し、危機管理機能を強化する
第2次中長期計画基本方針
- 回復期リハビリテーション入院のクオリティアップ
- ニューロリハビリテーションの深化と拡大
3~6. 総合リハビリテーションセンター化
- 脳卒中後リハビリテーションセンターの統合イノベーション
- 3.1. 上肢・下肢機能障がいリハビリテーションセンター
- 3.2. 高次脳機能障がい総合支援センター
- 3.3. ボツリヌス療法外来
- 3.4. 装具・義肢外来
- 嚥下リハビリテーション・心大血管リハビリテーションなど専門外来リハビリテーション部門の拡大
- 生活リハビリテーションセンターの充実
- 医療法42条施設・健康増進施設・指定運動療法施設の開設
- 感染症流行時対策強化
- 事業継続・危機管理・IT管理室(仮称)の設立
事業計画
- 回復期入院のクオリティアップ
- 1.1. 「できるADL」を「しているADL」への汎化を推進し、「入院生活全てがリハビリテーション」を追求する。方策:病棟リハビリテーションの推進、モーニングセッション・ナイトセッションの導入、セクショナリズムを撤廃した協働体制の構築、精緻な多職種連携(フレキシブル・スタンディングカンファレンスの適正運用)etc.
- 1.2. 家族との連携、維持期インフラとの連携をさらに推進する。information and Communication Technology(ICT)を積極的導入し、活用する。
- 1.3. 分野別カンファレンスをさらに推進する。担当者任せにするのではなく、各分野のチームが機能的に介入できる体制にする。嚥下カンファレンス、高次脳機能障害カンファレンス、脳画像カンファレンス、ニューロリハビリテーションカンファレンス、ウェルウォークカンファレンス、装具カンファレンス、栄養カンファレンス、転落・転倒環境設定回診、退院支援カンファレンス、退院前カンファレンスetc.
- 1.4. 回復期リハビリテーション看護師、回復期セラピストマネージャーが主体的に病棟運営に携わる。
- 1.5. 看護・介護度の高い重症者ケアの向上と排尿ケア、認知症ケア、摂食・嚥下ケア、褥瘡ケア、臨床心理ケアなどベーシックケアの向上を図る。各種認定看護師を育成し、看護・介護の専門性を高める。
- 1.6. 教育制度を更に整備し、人が育つ環境とする。班活動とリーダーグループ ミーティングを病院の隅々まで浸透させ、自走できる集団が統一目標達成に向かって連携する組織文化を作り上げる。研究活動、学会・論文発表を活性化する。
- 1.7. 新型コロナ等感染流行対策を強化する。7.の項参照。
- ニューロリハビリテーションの深化と拡大
- 2.1. 電気刺激療法(FES / NMES)の研究、応用拡大し、治療の体系化を目指す。
- 2.2. 非侵襲的脳刺激法(NIBS)の研究:経頭蓋直流電気刺激(tDCS)、反復経頭蓋磁気刺激 (rTMS)などの研究を進め導入する。
- 2.3. CI療法、CI療法+電気刺激、HANDS療法等を促進する。
- 2.4. 上肢ロボット研究を進め導入する。
- 2.5. Virtual Reality(VR)技術を用いたリハビリテーションの研究を進め導入する。
- 2.6. ニューロリハビリテーション室へと発展する。
- 2.7. 脳画像研究・応用を促進する。
- 2.8. 上記以外にも可能性のあるものは随時、研究、導入を進める。
3~6. 総合リハビリテーションセンター化
- 脳卒中後リハビリテーションセンター
- 3.1. 上肢・下肢機能障がいリハビリテーションセンターの形成
- 3.1.1. 回復期とともに維持期でのウェルウォーク活用と研究を進める。外来歩行ロボットリハビリテーションプログラムの開発を進める。
- 3.1.2. ロボット、各種ニューロリハビリテーション、ボツリヌス療法、筋電図解析、装具外来などを活用、併用したプログラムを開発する。
- 3.1.3. 上肢ロボットによる外来上肢ロボットリハビリテーションプログラムの開発を進める。
- 3.1.4. mediVRカグラを研究し、リハビリテーションプログラム開発する。
- 3.1.5. 42条施設・健康増進施設・選定療養費の枠組みを活用して、運動器・廃用症候群・脳卒中後遺症などに対する保険外リハビリテーションを行う。
- 3.1.6. ICTを活用したリハビリテーションプログラムを開発する。
- 3.2. 高次脳機能障がい総合支援センターの充実
- 3.2.1. 日常生活動作を含むQOLの向上リハビリテーション:医療保険では、高次脳機能障害・失語症は疾患別リハビリテーションにおける算定日数上限の除外対象患者としてリハビリテーションを提供する。介護保険では通所リハビリテーションを提供しているが、訪問での高次脳機能・失語リハビリテーションの拡大と、自立支援医療制度を用いたリハビリテーションの導入も検討する。ICTを活用したリハビリテーションも検討する。
- 3.2.2. 自動車運転再開支援:近畿自動車学校との連携を更に進める。大阪府高次脳機能障がい者自動車運転評価モデル事業の実績を積み上げる。自動車運転リハビリテーションに必要であればシミュレーターの導入等も検討する。
- 3.2.3. 復職・就労支援:大阪市中南部高次脳機能障がい包括ケアネットワークを発展させ、大阪市内中南部圏域における高次脳機能障害のある方の地域包括ケアを実現する。高次脳機能障害支援資源マップを普及する。
- 3.2.4. 高次脳機能障害の診断、身体障がい者手帳・精神保健福祉手帳・養育手帳などの為の外来高次脳機検査・診断書作成などの依頼を広く受け付ける。
- 3.3. ボツリヌス療法外来の充実
ボツリヌス治療の研究を進め、ボツリヌス治療外来の更なる発展を図る。装具班や他療法班と連携を進める。
- 3.4. 装具・義肢外来の充実
装具・義肢外来を充実させ、他療法班と連携を進める。義肢の研究、パラスポーツの研究を行う。
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嚥下リハビリテーション・心大血管リハビリテーションなど専門外来リハビリテーション部門の拡大
- 4.1. 嚥下リハビリテーションセンター
外来嚥下リハビリテーションを発展させる。嚥下評価外来として、食事形態や摂食方法の指導を行う。電気刺激療法なども用いて専門性の高い嚥下リハビリテーションを行う。
- 4.2. 心大血管リハビリテーションセンター
外来心大血管リハビリテーションセンターを開始する。
- 4.3. 脊髄損傷等、他の専門外来リハビリテーション部門を検討、開発する。
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生活リハビリテーションセンターの充実
通院・通所・訪問リハビリテーションをさらに発展させる。医療保険、介護保険、メディカルフィットネスを活用し、リハビリテーションで生活を支え、地域包括ケアの拠点となる。送迎の運用を開始し、利便性を高める。
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医療法42条施設・健康増進施設・指定運動療法施設の開設
42条施設・健康増進施設・指定運動療法施設を開設し、運動器・廃用症候群・脳卒中後遺症などに対する保険外リハビリテーション、フレイル・肥満・スポーツ・パラスポーツなどに対応するメディカルフィットネスを提供する。上述の各リハビリテーションセンターで開発したプログラムをパッケージ化し、提供する器とする。ICTの導入を進める。
医療法42条施設・健康増進施設・指定運動療法施設のプログラムを統合し、東住吉森本長居健康科学リハビリテーションセンター(仮称)へと発展することを想定している。
リハビリテーションセンター化、医療法42条施設・健康増進施設・指定運動療法施設の発展の過程においては、増築、施設の拡大も検討する。
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感染症流行時対策強化
コロナウイルス感染症2019の流行はこれまでの日常を変えた。回復期リハビリテーション病棟には感染症対応に関する診療報酬上の評価は全くなされていない。しかし、社会がwithコロナと進む中、高齢者、ハイリスク者が多くを占めるリハビリテーション病院では院内感染流行を許容出来るわけもなく、可能な限り自衛する能力を高めなければならない。経営を非常に圧迫することになるが、ソフト面は勿論のこと、病院の構造自体に手を加えることも検討せざるを得ない。院内PCR検査の導入、患者・スタッフ定期的抗原検査、空気清浄機の病室全室・リハ室配備、病室の陰圧室改造など検討し、実現可能なことから実行していく。リハビリテーションセンター化、医療法42条施設・健康増進施設・指定運動療法施設の発展とともに、感染流行時の非常用隔離部屋の確保の為にも、増築、施設の拡大も検討する。
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事業継続・危機管理・IT管理室(仮称)の設立
少子高齢社会、人口減少、地域医療構想下での病院淘汰、災害、パンデミック、テクノロジーの進歩などVUCAの時代の恒常的事業継続のための戦略を立案し、運営を管理する。実際に、第1次中長期計画の5年の間には、2025年問題が現実のものとして顕在化し、コロナウイルス感染症2019による長期に渡るパンデミックが起こり、病院を標的としたサイバーテロも多発した。ウクライナ戦争がおこり、物価、光熱費も高騰している。あらゆる危機、進化を続けるテクノロジーに対応する部署が事業継続には必須である。感染防止委員会、医療安全管理委員会、システム管理委員会、災害委員会など各種委員会とリンクし、対策を強化する。
医療事故が発生した場合や、患者・家族と医療者間での意見の食い違いなどが起こった場合に、双方の意見を聞いて問題解決に導く、認定院内医療メディエーターを配置する。また、ICTプログラムの開発などIT関連の案件対応を主導する。
他の取り組むべき課題
障がい者雇用
働き方、雇用の多様化
メンタルヘルスケア、臨床心理士
他施設、他企業との連携事業
SDGsへのコミットメント
障がい者スポーツ
再生医療
etc.
当院の実績
東住吉森本リハビリテーション病院
院長 服部 玲治