脳卒中の後遺症として現れる高次脳機能障がいは、麻痺などの運動機能障がいと比較すると、大部分が長期残存し、在宅復帰やその後の社会生活に大きな影響を及ぼします。周辺地域で高次脳機能障がいを集中的に治療できる病院や施設が少ない中、当院では退院後の継続したリハビリテーションだけでなく、社会復帰が必要な患者様に高次脳機能の専門外来を実施しています。
人間の脳は大きく分けて「呼吸や体温、覚醒リズムの調節などの基礎的な機能」と、「感情のコントロールや記憶する、注意を向ける、行動を計画するなど複雑な機能」である高次な機能の2つの働きをしています。脳卒中や事故(交通事故や転倒・転落など)によって脳が損傷されると、後者の高次な機能に障がいの出る場合があり、これを「高次脳機能障がい」と呼んでいます。
これは高次脳機能障がいの1例です。このように高次脳機能障がいは
1)生活の質の低下…①
2)就労の困難さ…②
3)自動車運転の困難さ…③
様々な部分に影響を及ぼします。
当院では1)~3)に焦点を当てて、お困りの患者様への外来リハビリテーションを実施しています。また、ご家族様、企業様や会社様へのカウンセリングやアドバイスなども実施し、不安の軽減やサポートも行っています。
実際に生活する中で感じる困難さを元に、高次脳機能障がいの程度を療法士が検査し確認を行います。患者様とじっくりとコミュニケーションを取り目標を立てることで、必要な機能を明確にします。その上で、高次脳機能に特化した訓練プログラムで機能の底上げを行い、生活上の困難さの軽減を図ります。また同時に生活の工夫なども提案し、生活の質の向上につなげていきます。
現在お勤めの会社様への復帰を目指す機能訓練のみではなく、患者様だけでは難しい職場の方への病状説明や就労形態等の働くためのサポートを実施します。また新規就労に向けたハローワークや就労支援事業所との連携も実施し、就労への近道を提案します。
当院では大阪府の事業の一つである「高次脳機能障がい者自動車運転評価モデル事業」に基づいて、運転再開に必要な神経心理学的検査を実施し、主治医の意見書の作成を行います。また検査結果によっては、訓練を継続したり必要に応じて近鉄自動車学校と連携し、実車評価を行います。多角的な視点から運転能力を把握し、運転再開に向けた高次脳機能の底上げや運転再開に向けたサポートを行います。
精神障がい者保健福祉手帳、障がい者年金、労災に関する書類(入院患者限定)などの公的制度の利用には申請が必要となります。そういった申請に必要な書類の作成や申請方法のアドバイスなどの支援を行っています。対応できない書類もありますので一度お問合せ下さい。
「大阪市中南部高次脳機能障がい包括ケアネットワーク(大高ネ)」を立ち上げ、大阪市中南部圏域(阿倍野区、天王寺区、東住吉区、住吉区、住之江区、浪速区、西成区)の医療、福祉施設や事業所と連携し高次脳機能障がいのある方の社会復帰を支援しています。医療と福祉の顔の見える関係性を構築し、より良い支援ができることを目指しています。
●活動内容
各施設で受けた高次脳機能障がいに関するご相談をネットワーク内で共有し、それぞれのご相談内容に合った解決方法を提案します。
●資源マップについて
高次脳機能障がいのある方がいつでもどこでも相談できるように圏域内にある資源(施設や事業所)の概要などを掲載しております。
●お問い合わせについて
ご相談がある際は、最寄りの施設や事業所、事務局までご連絡をお願い致します。どちらにご相談されても対応可能となっていますのでご安心下さい。
大阪市中南部高次脳機能障がい包括ケアネットワーク事務局 MAIL:info.daiconnet@gmail.com
東住吉森本リハビリテーション病院 TEL:06-6701-2121
当院では独自に「高次脳機能障がいへの理解と支援」「障がいのある方の自動車運転ガイドブック」の2つのガイドブックを作成し、配布を行っております。
●「高次脳機能障がいへの理解と支援」
高次脳機能障がいの説明
症状に対しての支援 など
●「障がいのある方の自動車運転ガイドブック」
高自動車運転再開に向けた手順
自動車運転再開に関する法律 など
それぞれのガイドブックでは説明を細かく記載しています。
患者様やご家族様が安心して生活を送ることができるようサポートをしています。